安藤の掃溜め

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【ネタバレ配慮】ラミ・マレックの怪演に注目。『ミスター・ロボット』を見てくれ【アマプラ全話配信中】

ラミ・マレックの主演ドラマ『ミスター・ロボット』の最終シーズンが、Amazon Primeで全話配信された。

 

全シーズン通して、確か45話くらい。数々の賞を受賞したことで話題となった作品だが、これがなかなかとんでもない傑作だったので、感想がわりにしっかり紹介しようと思う。

 

なお、当記事はネタバレに配慮しているが、人によっては「これネタバレじゃん」と感じられるかもしれないのでご留意いただきたい。ちなみに、Wikipediaにはけっこうデカいネタバレがあるのだが、ここではそれに配慮している(アレ、配慮しても書けるものなんだなあ……)。

 

■あらすじ

巨大企業「Eコープ」が人々の富をコントロールする2015年のアメリカ。「Eコープ」の起こした公害事故で父親を亡くしている孤独な天才ハッカー、エリオット・オルダーソンは、社会不安性障害に苦しみながら、技術者としてセキュリティ会社「オールセーフ」に勤務しつつ、人々のプライベートに侵入し、犯罪行為を通報して鬱憤を晴らしていた。

 

ある日、「オールセーフ」のシステムに何者かが侵入。対応に向かったエリオットは、反資本主義的な謎のハッカー集団「f.ソサエティ」の存在を知る。

やがてエリオットは、地下鉄で出会った「ミスター・ロボット」という謎の中年男性に導かれ、「Eコープ」の転覆を狙う「f.ソサエティ」の戦いに巻き込まれて行く。

しかし次第に「Eコープ」を陰で操る中華系暴力団「ダーク・アーミー」の存在が明らかとなり、全て順調と思われていた事態は急転を迎える……。

 

……って過程で、徹底的に痛めつけられるエリオットを眺めてハラハラする作品。

 

・シーズン1
エリオットが「f.ソサエティ」のみんなと一緒に打倒「Eコープ」のため奮闘。ついでに「Eコープ」のタイレルっていうやべーやつに目をつけられる。

 

・シーズン2
エリオットの精神が崩壊していく一方で、「ダークアーミー」が動き出し、「f.ソサエティ」に危機が迫る。また、エリオットの幼馴染で同僚のアンジェラも裏社会へ関わりだす。

 

・シーズン3
「ダークアーミー」のボス「ホワイトローズ」との戦いがいよいよ本格化。エリオットの精神状態もなかなかヤバい。怒涛の勢いで人が死ぬ。頑張れエリオット! テロを阻止しろ!

 

・シーズン4
「ホワイトローズ」との最終決戦へ。エリオットの成長っぷりに感動する。あらゆる伏線が回収されていく爽快感を楽しめる……と思いきや、ラスト3話で誰もが「は?」となった。

 

  ◆  ◆  ◆

 

『ミスター・ロボット』は全部で4シーズンある作品だが、「解決すべきこと」や「敵」は1stシーズンから一貫しており、登場人物もあまり増えない。さらに、登場人物たちの容姿・人種が多種多様で、“登場人物の顔覚えられない症候群”の筆者でもストレスなく観ることができた。

 

実のところ、同作のストーリーはそんなに複雑なものではない。構図は終始一貫して「世界中の富を牛耳るダーク・アーミーVSエリオット」だ。それさえ理解していれば割と素直に読み解ける。

 

というか、物語の展開についてはあんまり深く考えなくて良い。「ほーん、そんな感じね。理解理解」で全然OKだ。だってこのドラマ、本題は「エリオットの存在」そのものなのだから。

 

■登場人物はどんなヤツら?

・エリオット
父親を殺した「Eコープ」への復讐に燃える、主人公の天才ハッカー。天才っぷりは他作品の「天才ハッカー」の比ではなく、「俺が失敗する? あり得ないね」みたいなこと言うし、大量のハッカーを数日で出し抜いたりする。頭の回転も極めて早く、危機的状況を機転で回避する。
一方、精神状態は最悪で、人間不信や鬱に苦しみ、膝を抱えて泣きながらモルヒネを吸いまくる。幻覚や妄想の世界に引きこもることもある。
この類のキャラには珍しく、正義感が強くて優しい性格。特に性犯罪には厳しく、性犯罪者を裁くために危ない橋を渡ることも。「普通の人間になりたい」という願望が強い。戦闘スキルは皆無で、銃も撃てない。
幼馴染のアンジェラには淡い恋心を寄せている。

 

・ミスター・ロボット
エリオットのもとに現れた狂気的な中年男性ハッカー。倫理観の無い粗雑な性格で、曰く「お前を守るためにいる」らしいが、全くもってそうとは思えない。
エリオットを「f.ソサエティ」に誘い、打倒「Eコープ」の背中を押す。しかし、その正体は……。

 

・ダーリーン
「f.ソサエティ」の主力メンバーである女性ハッカー。口がめちゃめちゃ悪く、二言目にはFワード。実力は確かだが、パニック障害を持っているらしく、ヒステリーを起こすことも。精神的にグダグダなエリオットを見放さず、味方をしてくれる。その正体は……。
なお、「f.ソサエティ」には彼女の他にロメロ(黒人男性)、モブリー(髭面)、トレントン(中東系の女性)がいる。

 

・アンジェラ
エリオットの幼馴染で、エリオットと同じ職場で働いている。彼と同じく、母親を「Eコープ」によって亡くしており、「Eコープ」には敵意を抱いている。
最初はいわゆる“何もできない人”だったが、「f.ソサエティ」の戦いに巻き込まれ、次第に裏社会へ関わるように。ダーリーンとは知り合いの模様。

 

タイレル
「Eコープ」のやべーやつ。出世のためなら男とも寝るし、ハッキングも厭わない。が、キレると何をしでかすかわからない危険な性格。どうしてだかエリオットに惚れこんでいる。
かなり薄気味悪いやつだが、奥さんのヨアンナさんのほうがもっとヤバいので、ちょっとかわいそうにも思えてくる。

 

・クリスタ
エリオットを診察している女性カウンセラー。冷静沈着ないい人。エリオットは脳内で彼女をいろいろ評しているが、結局のところかなり信用しているっぽい。最終回間際で有能なカウンセラーだと判明。

 

・ホワイトローズ
「ダーク・アーミー」のリーダー。トランスジェンダーで、哀しい過去を持っている。人を洗脳して操る技術に長けており、裏で世界を牛耳っている。

 

・ベラ(ヴェラ)
ドラッグの売人。哲学的な話をベラベラ喋るが、そんなに頭は良くない模様。でも、言ってることはたまに正しかったりもする。エリオットを脅して脱獄を手伝わせた。

 

・レオン
作中もっとも立ち位置不明なヤツ。本好きで映画好き。どうもエリオットを気に入っているらしい。

 

その他の登場人物に関しては、随時出て来るのを随時覚えれば問題ない。なお、紹介していない人物にも重要な人が沢山出ている(つまり紹介したらネタバレになるようなヤツばっか)。

 

■ドラマの特徴は?

天才ハッカーを題材にした作品ということで、劇中にはハッキングのシーンが大量に出てくる。だがこのハッキングシーン、よく見る「キーボードを高速タイピング→画面上に変なCGが出現→わかりやすく撃破」みたいな感じではなく、マジの専門家を招いて作ったマジのハッキングシーンだそうで、リアリティはあるがわかりやすさは皆無。

ただ、ハッキングのシーンは流し見でも大丈夫。「エリオットすげー」って思っていればいい。

 

この作品はラミ・マレック出世作なのだが、なんというか、間延びしている部分をラミの魅力で乗り切っている感じがちょいちょいする。特にシーズン2あたりは精神崩壊直前でウダウダやっているため、エリオットに入れ込めない人にはなかなかキツい。

しかし、そもそも作品の主題はエリオット自身なので、魅力ゴリ押しにはちゃんとした意味がある。それを見失わなければ大丈夫だ。

小難しいことがわかんなければ、とりあえず「ラミ・マレックすげえ……」って思っていればOKだ。意外と、そういう人こそラストで報われる。

 

なお、作品は暴力とドラッグのオンパレードで、さらにそこへ精神疾患等の要素も入ってくる。がっつりしたセックスシーン(男女、男男、女女)もあり、親と見るには地雷だと思う。

元からラミ・マレックは過激な役回りが多いのだが、エリオットはその過激な要素を全部煮詰めて鼻から吸ったような役だ。拉致監禁は日常茶飯事、ゲロ吐いてのたうち回ったり、リンチされたり、全裸でトリップしたりする。あまりにも可哀想で心が痛むが、俳優魂を感じたいって人にもなかなかおすすめな作品だ。

 

■これから見るなら何に注目すればいい?

最終回まで見て達した結論は、「エリオットのカウンセラーになったつもりで見るといい」という感じ。

 

・エリオットがどういう思想で、どういう性格で、どういう過去があって……というところにひとつひとつ注目すれば、気持ちよく最終回まで完走できる。

 

・エリオットを中心として、彼に起こった出来事の時系列をよく整理すること。

 

・エリオットに関することで、いくつかの違和感ポイントが用意されている。全てに解があるわけではないが、「何が好き?」「何を嫌がる?」「何に怒っている?」というところは観察すべき。

 

・シーズン1におけるミスター・ロボットの登場シーンには違和感がある。それに注目すること。2以降は違和感の正体が判明するので気にしなくてOK。

 

・エリオットは「信用できない語り手」なので、彼の視点で語られる画面には時折ウソや幻覚が混ざっている。どこまでが現実か、それとも夢か、見極めると良い。

 

・シーズン4でエリオットの過去に関する「ある事実」が明かされるが、実はこれ、シーズン1の1話から伏線が張られている。これから見るならそこに注目してほしい。

 

■いかがでしたか?

ものすごく陳腐な表現だが、この作品のラストこそ「誰も予測がつかないラスト」なんだと思う。誰もが騙され、そして膝を打つ。伏線はしっかり張られていたし、無理な部分は無い。こんなに綺麗な「トゥルーエンド」はなかなか見られない。

 

いやもうほんと、ラスト3話を見るために40話見る価値がある。中間部分は間延びしてる印象が無きにしも非ずだが、ラミの演技は終始圧巻。彼だけでなく、主要キャストは皆素晴らしい。どうか、あの衝撃を体験してみてほしい。

 

※ちなみに、プライベッターにはネタバレ解説も公開しています。全話視聴後にどうぞ。