安藤の掃溜め

どこに投稿するかわからないものを投稿するために開設。飽きたら放置。

クイーン+アダム・ランバート ライブのススメ

クイーンが来る。
アダム・ランバートと一緒に来る。
昭和に生まれたバンドが、平成に社会現象を巻き起こし、令和に来日する。
令和元日(?)からチケットの販売が始まり、令和になってから初めてのお正月が明けたら、間も無くミュージシャンやスタッフたちが日本に来る。
それってめちゃめちゃ面白くない?


今日び珍しく「ロックは不良の音楽だ」「エレキギターは耳を壊す」としてライブ禁止令があった高校出身の私が初めて行ったロックコンサートは、2016年のクイーン+アダム・ランバート来日公演だった。これはもう生涯の自慢である。初ライブがクイーン。あ、ちなみにその頃には大学生になってたから、校則違反はしていない。

2世ファンでもなく、ロックを聴き始めて僅か数ヶ月。チケットを申し込んだ瞬間は妙な罪悪感に苛まれ、ライブ前日は変に緊張して眠れなかった。2016年9月22日の日本武道館周辺は肌寒く、小雨も降っていた。物販列に並んでいたら車に乗ったブライアン・メイが通りかかり、手を振ってくれた。車もデカかったが、胸から上だけで助手席の窓いっぱいになるブライアンのサイズ感にビビった。


自分の席に知らないおじさんが座ってたというアクシデントこそあったが(席を間違えたらしい)、ショウは的確な形容詞が見つからないレベルだった。演奏は当たり前のように上手いし、照明演出は「これ電気代いくらかかるんだろう?」と心配になる程だし。ライブってよりショウそのもの。もうなんだこりゃ、である。


さて、2020年の来日公演を半年とちょっと後に控え、私は改めてクイーン+アダム・ランバートの魅力を語りたい。そんなことしたらチケットの抽選倍率が上がる?まあいいじゃないか。抽選にすら参加しなかったことを後悔する人間の数は少ないほうが良いに決まってるんだから。


クイーン+アダム・ランバート。これを「長いバンド名」と捉えるか、「クイーンとアダム・ランバートという別の個性の融合と捉えるか、「アダム・ランバートがヴォーカルをしているクイーン」と捉えるか、「クイーン」と捉えるか、その捉え方を他人に押し付けるようなものではないと思う(という価値観を私は押し付ける)。
ただ、ブラックサバスのファンサイトを運営してる海外の方が「クイーンのライブを観に行ったけど、オリジナルメンバーではないから完全なクイーンとは言えないね」と言っていたのには全力で「お前が言うな」と反論したい。あんたらオリジナルメンバー1人しかいなくなったことあるじゃん

2011年から2012年にかけての期間で正式に活動を開始した彼らは、ド派手なステージセットをトラックに詰め込み、世界各地のスタジアムを満員にする戦闘力高めなバンドである。ひとたびツアーが始まれば、公演頻度は2日に1度。年50~70公演は当たり前。おじさまたち、攻撃力もHPもMPも高い。

メンバーは、皆さんご存知ブライアン・メイにロジャー・テイラー、ちょっぴり刺激強めなアダム・ランバートサポートには、クイーン歴35年、なんでも弾けるスパイク・エドニー(キーボード)と、ハンチング帽が渋カッコいいニール・フェアクロー(ベース)、インスタの更新頻度が高くて見てて楽しいタイラー・ウォーレン(パーカッション)がいる。ちなみに全員歌えるので、コーラスの厚みは進化傾向である。


セクシー&ファビュラスなアダム・ランバートは若くエネルギッシュな青年だが、37歳なので、ブライアンやロジャーと同じく昭和生まれだ。オーディション番組から発掘された彼の歌手としての特徴は広い声域で、どの音域でも伸びがよく、声量がたっぷりと持続する。また、彼は強靭な喉の持ち主であるから、長期のツアーでも歌唱力は安定している。


若干の「イロモノ」臭がすると評価されることがあるアダムだが、それは半分間違いで、半分正解だ。彼のパフォーマンスは清純無垢なタイプではなく、マイクを持っていない方の手の定位置は股間というくらいにはアブない。
だが、煌びやかな衣装を纏い、バキッとしたハイヒールを踏み鳴らして花道を歩く様は「女王様」の名にこれ以上なくよく似合う。マスカラに彩られたあの睫毛の長い瞳にひと睨みされてみろ。誰だってイチコロのキラークイーンだ。


当然それだけではない。アダム・ランバートはセクシー&デンジャラスなビジュアルとパフォーマンスのインパクトを忘れさせるほどの、超実力派シンガーである。ワンフレーズ口ずさむだけで会場の空気をガラリと変え、観客の熱狂を喚び起す、そんな天性の才能が彼にはある。
それはフレディ・マーキュリーと同種の才能だ。単なる美声や歌唱力、声量だけではクイーンに負けてしまう。「それ以上」があったからこそ、アダム・ランバートはクイーンとともに歌えるのだ。吸引力のある歌声に惹きつけられ、熱狂の渦の中へ落ちていく感動を、ぜひ会場で味わっていただきたい。


70歳を過ぎたロジャー・テイラーとブライアン・メイの演奏がガタついてないか心配だって?心配ご無用。文句なしだから。たまに「ブライアンのタッピングが怪しい」という意見を聞くが、彼タッピングもともとそんなめっちや得意ってわけでもないです。


品良くしかしエネルギッシュなロジャー・テイラーのドラムは、青年期に見られた挑戦的な空気が控えられ、より洗練され、より優雅になっている。体力勝負なドラムだが、疲れも年齢も感じさせない腕前は職人技だ。
例年通りならば、ロジャーは何曲かヴォーカルも務めている。ハスキーで音域の広い歌声は昔のままだが、ヴォーカルスタイルは丁寧で落ち着いている。歳をとってからタトゥーを入れるイケイケおじさんに見えて、実のところはどこまでも品が良いのだ、この男。


足元が危なっかしいブライアン・メイは相変わらずあんな感じで、抜群の安心感がある。超外交的で若いバンドとの交流を積極的に続けてきたブライアンのギターは、ロックの歴史を濃縮したような仕上がりになってきた。ギターソロは決して超絶技巧ではないが、優しい音色と浮遊感に包まれる幸福な時間を味わえる。
そういや、ブライアンの声はか細い印象がある方も多いだろうが、よく考えれば彼、コージーパウエルのドラムをバックに歌いまくってたわけで、生で聴くと声量がバリバリにある。その辺りにも注目してほしい。


MCが英語で不安でも大丈夫だ。アダム・ランバートの英語はちょっとだけ早口、かつマイクにエコーがかかってて聞き取りにくいが、そんなに難しいことは言っていないから落ち着いて聞けば良い。
ブライアン・メイは、さすがは博士というか。簡単な語彙を選んでくれて、更にはとってもゆっくり喋ってくれるし、MCの半分くらいは日本語だから、こちらの語学力が中学英語レベルでも、内容が90%わかる。
もちろん、これを機に英語を学ぶことは最高のきっかけだ。しかし、学んでいなくても恐れることはない。言語の壁なんて、女王陛下の前には存在しない。
ちなみにロジャーはあまりたくさん喋らない。渋いぜ。



さて、そんなクイーン+アダム・ランバートの最大の魅力は、ド派手な舞台演出とともに繰り出される世界最強セットリスト(曲目)だ。


QALの舞台は、とにかく豪華絢爛である。舞台を覆う巨大幕だとか、特製の巨大スクリーンだとか、スモークだとか、レーザービームだとか。マジで1公演でいくらかかるんだアレ。ミラーボールがニョキニョキ伸びてくるときなんて、演出が派手すぎてもはや舞台が見えなくなっちゃう。アイラブミラーボール。ウィーラブミラーボール。


空中ブランコとかサンバのダンサーとかが出てきても全く違和感が無い派手さ。もちろん空中ブランコもサンバも無いが、この間は地面からロボットの頭がズモモモモと生えてきた。面白すぎる。


エンターテイメント性の増した楽曲解釈も楽しい。早くなったり遅くなったり、映像が差し込まれたり、ヴォーカルが変わったり。特に『Killer Queen』なんかは、ミュージカル系歌手の本領を発揮したケレン味たっぷりなアダムの演技と歌唱が楽しめるということで大人気だ。
豪華なソファに寝転がり、長い睫毛をパシパシさせて扇子をせわしなく煽るアダム・ランバートは色気ムンムン。そんなふうに演技をしながらも、歌声はブレないんだからおっそろしい。


演奏される曲に関して、これだけは伝えたい。クイーンのセットリストは世界最強だ。大ヒット曲だけで緩急のある20数曲のセットリストを組める現役バンドはそうそういない。しかも映画が大ヒットしたおかげで、「予習?映画観とけ!」ってレベルにまでなった。世界最強どころか史上最強である。

もしもあなたが「ライブ行くから予習しとこう」というタイプならば、フレディ存命中に2枚出ている公式ベスト盤を聴いておけば大丈夫だ。世界中で大ヒットした曲が中心の「1」より、後期の秀作中心の「2」のほうが、「予習」としては良い。
今年のツアーはまだセットリストが出ていないが、映画のヒットを受けて、映画のサントラの収録曲が多く演奏されるという予想はできる。ひとまず、予習をしたいならば、映画のサントラを含むベスト盤を聴こう。夏頃にツアーが始まったらすぐにセットリストが回ってくるから、予習はそれからでも良い。

活動年数が長いバンドになると、権利関係や脱退したメンバーの意向などで「演奏できないヒット曲」ができてしまう事がある。しかしクイーンのセットリストにおいて、そういう心配は無い。名曲たちを思う存分楽しもう。


気になる観客のノリには、気をつけたほうがいいポイントがある。


クイーンの観客は、「非常によく歌う」。よく「お前の歌を聴きに来たんじゃない!アーティストの歌を聴きに来たんだ!」という話があるが、クイーンやQALにおいては、観客が歌うノリが「正しい」。歌うこと推奨、応援上映スタイルである。
どうしてそういう習慣が生まれたのかはよくわからないが、どの国でもとにかくみんなよく歌っている。ちなみに、歌声があまりに小さいと「ノリが悪い」と判断される。
ただし当然、デカい声で歌えばいいという話でもない。常識と良識の範囲内で口ずさみ、観客席へマイクを向けられたら全力で声を出すことはQALにおいて正しいが、「どのタイミングでも常に熱唱」は推奨されていない。バンドも、あまりに観客が大声を出しすぎている公演の音源をお蔵入りにしたりしてる。まあ静かすぎてもお蔵入りにしてるから、その辺りは適度に、だ。


なお、QALにおいては「観客が歌う」曲がある。ひとつは『Love Of My Life』。これは歌詞を全部覚えておいたほうがいい。そして、『手をとりあって』。これも日本語歌詞部分だけではなく、英語部分も覚えといたほうが楽しい。

注意が必要な点として、『Somebody To Love』の最後の方、アカペラになる部分(3:48辺りの所。映画だと、冒頭でウェンブリーの観客がカメラいっぱいに映し出される場面)は、「Somebody To」までがアダム、「Love」が観客、という無茶振りをされることがある。これがめちゃめちゃ難しい。
成功確率があまり高くない所だから、今回は無茶振りされないかもしれないが、無茶振りされる可能性を考えて、アダムが何か手振りや指揮をしていたら、注目しよう。確か3年前は失敗した。

今回セトリに入るかはわからないが、『'39』も、観客がサビを歌う曲だ。これが入ったら私は転げ回って喜ぶが、近年はあまり演奏されていない印象がある。この曲に関してはサビだけ歌えればなんとか問題無い。


それだけ押さえていれば、恐ることは何も無い。たまに否定的なファンはQALを「フレディの法事」と言うが、QALはむしろ、最高のヴォーカリストと最高のバンドとともに、最高の楽曲を全身で楽しむ「祝祭」だ。そして、肉体はそこにいなくても、フレディとジョンの存在は確かにそこにある。QALの公演は、それが感じられる、素晴らしい公演である。

初心者も玄人も大歓迎、ただし時期が時期なので、インフルエンザ等にはご用心。さあ、あとはお席がご用意されていることを祈るのみだ。
さて、あなたに、人生を変えるような素晴らしい音楽体験が訪れますように。